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悪循環

悪いときには悪いことが重なります。薬とともに医学が進むというひともいます。まずは痛みの悪循環です。局所の乏血から組織の酸素欠乏をおこしさらには痛みを起こす物質の生成そして侵害受容体を刺激します。痛み刺激を受けると侵害受容体に働きます。痛み刺激は急進性に上向性伝達します。ドライアイの悪循環は日本と米国で異なります。まず涙液浸透圧の上昇により炎症がおこることがアメリカのドライアイの悪循環の考え方です。したがってドライアイ治療に免疫抑制剤を最初から用いるそうです。一方日本のドライアイのコアメカニズムは浸透圧なんてお構いなしです。TFOTの考え方です。角結膜上皮障害により水濡れ性が悪化、更には涙液安定性が悪化するという考えです。ほかにどのような悪循環があるでしょうか?子供の学習も同じです何かを引き金に不登校になる。勉強や人間関係から取り残されてしまう。ますます登校しにくい。「私立受験のお子さんが夏休み前に受験やめるというんです。」聞けばうちの子が通っている中学校を目指しておられるそうだ。視力がでない。こころの状態が体に現れることを心身症と言いますが特に心の状態が目に映し出されることを心因性視覚障害といいます。受験は精神力を鍛える。過酷な戦いです。心因性視覚障害も悪循環です。昔は家の外に原因があったが今は家の中に原因があることが増えています。学校健診で見つかります。

腎臓

腎臓は片方を摘出してもほとんど腎機能上は問題がありません。だから子から親への生体腎移植が可能です。腎臓を六分の五摘出しても腎機能は二分の一に保たれる。大きな予備力を有する臓器です。心不全患者さんで予後を規定するのは腎機能が一番です。逆に言うと心不全の治療において、腎機能を悪化させない努力が重要です。心不全の方の生命予後を左右する因子は第一位BUN,次がSBP,そして三番目がクレアチニンです。腎臓病といえば今世紀に入りCKDつまり慢性腎臓病という概念が入ってきました。更にはGFRの測定が困難であることから血清クレアチニン値、性、年齢から換算糸球体濾過量eGFRを計算し或いはeGFR推算式を用いて腎機能の低下を判定するようになっています。15年前から維持透析の一番はDKDです。DKDとは糖尿病性の腎障害です。腎臓病といえば糸球体濾過過剰を促進しないようにタンパク質の制限と食塩の制限です。高血圧では食塩6グラム、WHOは健康人で5グラムと提言し話題となっているようです。糖尿病でもUKPDSのデータが示すようにけつとうコントロール同様に血圧管理は重要です。

高齢者の糖尿病

日本人の糖尿病罹病率は増加するばかりです。遺伝素因として日本人のインスリン分泌は欧米人の半分しかありません、ところが飽食の時代となり50年で総脂肪摂取が3倍、動物性脂肪摂取が4倍となっているそうです。日本は高齢化社会を迎えています。高齢者の糖尿病は増える一方です。HbA1cは下げれば下げるほどよいかという研究がなされ報告されました。内科でHbA1cが高いと怒られましたと述べられる方は大変多い。それならまたいくらにしたらよいのかと感がる方も存在するはずです。J-EDITという研究です。その中で分かったことわからないことがあるようですが分かったことは脳卒中エベントで考えますとHbA1cが8.8以下のグループの次に危険なのHbA1c7.2以下の最も血糖が低いグループです。つまりHbA1cが一番低い言い換えれば血糖管理がよいグループであったそうです。高血糖の是正は大切ですが低血糖の是正も大切です。糖尿病は認知症につながるとされています。推定されるのは血液の中では血糖が高い状態ですが脳内には糖が少ない状態です。糖は脳の栄養として大切です。コレステロールも細胞膜の構成に必要です。糖やコレステロールは完全な悪役ではありません。うつ病や鬱状態併発の糖尿病には心血管エベントが増すと以前から指摘されてます。

アコファイド錠

アコファイド錠は機能性デイスペプシアの薬です。一回100mgを3回毎食前に服用します。アコファイド錠は従来のガスモチンの強力な薬とされています。むかしなら六君子湯や安中散を或いは大建中湯と六君子湯を使うところですが今はガスモチンをつかっています。アコファイド錠は効果がガスモチンよりも強いそうです。アコファイドはアセチルコリンエステラーゼを阻害します。その結果副交感晨鶏終末から遊離されるアセチルコリンの分解が抑制されるため消化管運動が改善します。食後腹部膨満、上腹部膨満、早期満腹感の3つの症状すべてに有効です。漢方がよいという人も多い。今日も一日に大建中湯を7.5g飲むのが苦痛だといわれてました。本当は18gを一日に飲むことを話したところそんなん無理とおっしゃっていました。確かに18gは多い。どれくらいのひとが真面目にお飲みなのかと思います。大建中湯には山椒、水あめ、ニンジン、乾姜が配合されています。ツムラは18gですがコタローは27gです。絶対に漢方薬だけでおなかが膨らむことはあるでしょう。

御臨終です

最近のことですが久しぶりに死亡診断書を書きました。死亡診断書の上の方は以前と同じで下の方は様式が少し変わっていました。知人に尋ねましたが以前の様式も使えるようです。「朝の4時3分残念ですがご臨終です」とご遺族に告げたのでした。眠い時間ですが世の中そんなものです。休日夜間は関係ありません。この時間に死亡確認すると朝まで熟睡できることはまずありません。そして、死亡確認の次は死亡診断書を書くことです。人は手足の末端から次第に冷たくなる。そしてだんだん肘やひざへと冷感やチアノーゼがあがってきます。血圧低下により心電図モニターの血圧自動測定では次第に測れなくなります。時刻を確認の上死亡を告げる因果な仕事です。昔なら御遺体は家に帰り枕経です。これまた昔、寺に住んでいたとき朝の5時に電話が鳴り枕経に来てほしいといわれました。朝7時まで待つのがしきたりと聞いていましたので!でも目があいたので枕経をあげにお宅まで伺いました。葬儀屋が来ており通夜供養や葬儀の相談をしておられました。私は朝8時30分には病院で働く身ですので連絡が遅いのも困ります。しかし朝5時も困るなあ。亡くなられてからお迎えの車が病院に来るまでの時間は嫌な時間です。寺に生まれても行院で修行しても継がない寺の子が多いですね。まわりがつまり檀家のひとが厳しすぎるからでしょうか。私の小学校のとき同級生で双子の寺の子がいましたが一人はこの世にはいません。寺には子供がいないところが多い、目に見えないストレスがあるのかな。子供がいても寺には戻らぬ子が多い。周囲から注目され身をひそめて暮らすことは並大抵ではありません。少なくともわたしにはできなかった。五木ひろしの歌で「私は不幸です」というのがありましたが僧侶と癌の治療でリニアックをあてる放射線科。どちらも不幸です。死によくめぐり合う人間です。大きな寺院では僧侶がリストラされるそうです。厳しい時代です。

トビエースと抗コリン作用

さらに強くというタイトルでトビエースが登場しました。トビエースは過活動性膀胱の治療薬です。抗コリン作用には膀胱の収縮抑制、眼圧上昇、胃腸の平滑筋の収縮運動の抑制、狭心症発作の誘発等が挙げられます。抗コリン作用は花粉症やかぜのくすりでのどが渇く、便秘、尿閉等不快な症状の多くを指します。抗コリン作用は口、前立腺、大腸など多くの臓器と関係します。その中でも意外と知られていないのが抗コリン作用と頭です。頭と泌尿器科はつながっています。認知症の人にPL顆粒など抗コリン作用が強いものを投与すると錯乱状態になることがある。意外と知られていない事実です。今のアレルギー世代が高齢者になると抗アレルギー薬で認知機能が低下することが予測される。ファイザーから出た新薬のトビエースはデトルシトールのプロドラッグだそうです。今までのプロドラッグはロキソプロフェンのように胃腸障害という副作用軽減が目的でしたがトビエースは過活動性膀胱の治療効果を高める為また抗コリン作用を軽減するためにプロドラッグになったところが特筆されます。さらにCYP2D6は個人差があるためデトルシトールでは増量不可でしたがトビエースでは可能になりました。

配合剤とアイミクスHD

配合剤が流行りです。アイミクスHDが昨年発売されました。特徴はカルシウム拮抗薬が最大量配合されていることです。海外では早くから配合剤が点眼薬として使われていました。10年ぐらい前は点眼薬でも配合剤は無理であると聞いていました。何が無理というと日本では配合剤の許可が下りないとのことでした。ところが最近アイミクスHDやユニシア配合錠HD、コソプト点眼液など血圧や眼圧など数字ではっきり出る領域において配合薬が多くなっています。この裏には新薬開発が特許切れに間に合わないという背景があります。点眼薬では配合剤を用いることにより防腐剤アレルギーの予防やアドヒアランスの向上に間違いなくつながります。最近発見した配合剤にアイミクス配合剤HDがあります。アムロジピンが10mgが入っていることが特徴です。今までの配合剤ではアムロジピンが5mgでしたが初めて最大量の10mg入っています。海外ではおおむね70パーセントはアムロジピン10mgが使われているそうです。アムロジピンはCCBに属する高血圧治療薬です。ARBとCCBの合剤が数多くあるがアムロジピン10mgはアイミクスHDだけです。

慢性疼痛とオピオイド

慢性疼痛とは「疾患が通常治癒するのに必要な期間を超えているにもかかわらず、訴えつづけられる痛み」です。最近、疼痛は心因性疼痛と侵害受容性疼痛さらに神経障害性疼痛の3つにわけられるようです。例えば慢性腰痛は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の混合型が60パーセントです。オピオイドが有効なのは侵害受容体性疼痛と神経障害性疼痛です。当然ですが心因性疼痛には使ってはいけない。オピオイド依存症を生むだけです。オピオイドとは「アヘン類似物質」のことでモルヒネ、コデインが含まれます。慢性腰痛には椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が含まれます。痛み止めといえば一般にNSAIDsつまり非ステロイド消炎鎮痛剤です。さらには最近では末梢神経障害性疼痛の薬であるリリカつまりプレガバリンが普及しています。しかし眠くて眠くてという患者さんが多いのも事実です。2010年から強オピオイドであるノルスパンテープが使えるようになりました。私も複数の患者さんに頼まれ慢性疼痛にノルスパンテープを処方しておりましたがかぶれるようになりその後手術に至りました。ノルスパンテープの登場とともにオピオイドは気軽に使えるようなりました。日本はオピオイドなどの麻薬使用量が少ないとされてきましたが現在は必ずしもそうとは限りません。

PAD

PADは末梢血管閉塞性疾患のことです。PADNに対する動脈硬化の指標として簡易な物には頸動脈エコー、PWV,ABI,微量尿アルブミンなどがあります。PADに対するこれらの検査でDOPPLer血流計がGOLDEN STANDARDです。誤差が少ない、再現性がよい、測定環境による影響が少ない、安価などの理由です。PADがある人では冠状動脈疾患や脳血管障害のリスクが高くなります。日本における死亡原因は31パーセントつまり3人に1人は悪性腫瘍です。16パーセントが冠状動脈疾患、11パーセントが脳血管障害、他の血管障害が2パーセントとなっておりこれまた3人に1人は血管の障害つまり閉塞や出血でで亡くなられておられることになります。PADはfontaine分類の一度は無症状、二度は間欠性跛行、三度は安静時疼痛、四度は壊死です。PADの死亡原因は心臓病、脳血管障害、その他の血管障害の順です。LipoPGE1の注射がよく効きますが三度の安静時疼痛以上の症状に適応があります。そこで内服でよいか?専門施設に患者さんをご紹介いたしました。手術の適応はないだろうか?ドキドキしましたがむしろ内服薬の適応だといわれました。ああよかったと思ったのはわたしだけでなんで注射してくれないのかと怒っておられました。世の中難しい。厳密に言えば専門医から勧められた内服薬のプレタールも「と書いてあるから安静時疼痛」FOTTAINE分類の3度以上です。

CRPS

CRPSとは複合性局所疼痛症候群のことをさします。以前ははRSDと呼ばれていました。Refrex Sympathetic Pain Syndoromeと呼ばれいたようです。CRPSをご存知のかたはかなり疼痛医療にお詳しい方でしょう。生活習慣病では採血が必須です。採血の時の静脈穿刺で痛みが残る経験をなさったことはありませんか?採血6000回に一回正中神経の損傷がおこるそうです。CRPSは太い神経ではなく細い神経ですCRPSを避けることは不可抗力のようです。なぜなら血管と伴走する神経は細いし見えません。患者さんが痛いと言っているのに「気のせいですよと突き放したり」この時おこる痛みを「そんなもん治るから大丈夫」といった態度をとることから誘発されることもあるようです。血管と違い見えない神経を避けるのは無理です。全身麻酔下での静脈穿刺ではCRPSを発症することはないとされています。採血は肘で行うことが多いと思います。可能であれば肘の小指側で採血を避ける方がよいとされています。考えられていることは細やかな対応、精神的な対応が必要であるとされています。